2026.09.01
「胚盤胞まで育ったのに着床しない」「次の移植までに、自分でできることはありますか?」そんなご相談をいただくことがあります。
着床には胚側・子宮側を含むさまざまな要因が関係します。
漢方では、着床だけを見るのではなく、月経や基礎体温、冷え、疲れなどから、赤ちゃんを迎えるための体全体の状態を考えていきます。
「移植までに何かできることはありますか?」
こんにちは。
小諸市の勉強堂薬局です。
妊活相談の中で、
「採卵して胚盤胞を凍結できました。移植までに何かしておいた方がいいでしょうか」
「何度か移植しましたが、なかなか着床につながりません」
「病院での治療以外に、自分でできることはありますか」
と相談されることがあります。
体外受精では、採卵、受精、胚培養、そして胚移植と、いくつもの段階を経て治療が進みます。
ようやく胚移植までたどり着いたからこそ、「今度こそ」という期待が大きくなる一方で、着床しなかったときには「自分の子宮に何か問題があるのでは」と不安になる方もいらっしゃいます。
しかし、着床は子宮内膜だけで決まるものではありません。
胚の状態や染色体、子宮内の環境、ホルモンの状態など、さまざまな要素が関係します。
そのため、移植を繰り返しても妊娠に至らない場合には、まず病院で必要な評価を受けることが大切です。
そのうえで漢方では、「着床だけを何とかする」というより、移植を迎える現在の体がどのような状態なのかを考えていきます。
子宮内膜は「厚ければ厚いほどよい」わけではありません
胚移植を予定している方が特に気にされるのが、子宮内膜の厚さです。
「内膜が薄いと言われました」
「何mmあれば大丈夫ですか?」
というご質問もよくいただきます。
子宮内膜は、受精卵が着床し、その後の妊娠を支える大切な場所です。
勉強堂薬局では、移植に向けた体づくりを考える際、子宮内膜10mmを一つの目安として目指しています。
ただし、「10mmなければ着床できない」という意味ではありません。実際の不妊治療では、10mmに達していなくても、胚の状態や治療経過などを総合的に判断して移植が行われることがあります。
そして、もう一つ大切にしているのが、子宮内膜は厚さだけではなく、その状態も含めて考えることです。
私たちは相談の中で、子宮内膜をよく「赤ちゃんを迎えるベッド」に例えてお話しします。
ベッドは、ただ厚ければ心地よいわけではありません。
適度な厚みがあり、やわらかく、しなやかで、心地よく過ごせる状態であること。
そんなイメージで、厚さだけではなく「質」も大切にした子宮環境づくりを考えています。
もちろん、「フカフカの内膜」というものを医学的に測定できるわけではありません。
そこで漢方相談では、内膜の厚さという数字だけを見るのではなく、
- 月経量は十分にあるか
- 経血の色はどうか
- 経血に大きな塊はないか
- 生理痛はないか
- 基礎体温はどのように推移しているか
- 冷えや疲れはないか
- 食事や睡眠は十分か
といった体からの情報も一緒に確認します。
漢方では「血」を、体に栄養や潤いを届けるものとして考えます。
そのため勉強堂薬局では、必要な血を「満たす」ことと、その血をしっかり「巡らせる」ことの両方を大切にしながら、移植に向けた体づくりを考えていきます。
生理痛や経血の塊も、漢方では大切な情報です
例えば、
- 痛み止めが必要なほど生理痛が強い
- 経血に大きな塊がある
- 経血の色が暗い
- 生理が始まってもすっきり終わらない
- 手足や下腹部の冷えがある
- 肩こりや頭痛が強い
こうした状態がみられる方では、漢方では「瘀血(おけつ)」という血の巡りが滞った体質を考えることがあります。
ただし、瘀血が子宮内膜症や子宮筋腫を引き起こすという意味ではありません。
子宮内膜症、子宮筋腫、卵巣嚢腫などは医療機関で適切な診断・経過観察や治療を受ける必要があります。
漢方相談では、こうした病院での診断を確認したうえで、月経や冷え、疲労など、その方に現れている体調を漢方的に捉えていきます。
また、血の巡りだけが大切なのではありません。
月経量が少ない、顔色が淡い、爪が割れやすい、疲れやすいといった方では「血虚(けっきょ)」。
疲れやすく、胃腸が弱い方では「気虚(ききょ)」。
ストレスが強く、生理前のイライラや胸の張りなどがある場合には「気滞(きたい)」。
年齢や体調によっては「腎虚(じんきょ)」。
同じ「移植に向けて体を整えたい」というご相談でも、漢方での考え方は一人ひとり違います。
子宮内膜症・卵巣嚢腫を経験したAさんの妊活
以前、勉強堂薬局にご相談いただいたAさんをご紹介します。
Aさんは妊娠を希望して3年。
病院でタイミング法を7か月、人工授精を3回、その後、体外受精、顕微授精へと治療を進めていました。
子宮内膜症があり、卵巣嚢腫については手術も経験されていました。
勉強堂薬局で詳しくお話を伺うと、
- 経血に塊がみられる
- ストレスが多い
- 頻尿が気になる
- 基礎体温が安定しない
といった体調も確認できました。
そこで、病院での治療を続けながら、漢方では月経や基礎体温、ストレスなどを確認し、その時々の体調に合わせた体づくりを始めました。
漢方を始めて4か月頃には、以前より基礎体温に安定した周期がみられるようになりました。
その後も病院で子宮内膜症や卵巣の状態を確認しながら漢方を継続。
約1年後に採卵を行い、9個の卵子が採取され、そのうち3個が胚盤胞として凍結されました。
その後、移植に向けて体調を確認しながら漢方を継続し、漢方を始めて約1年3か月後に凍結胚移植を実施。
妊娠が確認され、その後出産されています。
もちろん、これはAさん個人の経過であり、漢方を一定期間服用すれば同じ結果になるというものではありません。
また、Aさんの妊娠を漢方だけの効果として考えることもできません。
病院での治療と並行しながら、Aさん自身が時間をかけて体調を整え、移植を迎えた一つの相談例としてご紹介しています。
移植を待つ時間も、体を振り返る時間に
凍結胚移植では、採卵した周期とは別の周期に胚を移植することがあります。
「せっかく胚盤胞ができたのだから、一日でも早く移植したい」
そう思われるのは自然なことだと思います。
一方、病院の治療スケジュールの中で移植まで時間がある場合には、その期間に自分の体調を振り返ってみることもできます。
例えば、
生理痛は以前より強くなっていないか。
経血量や経血の状態はどうか。
基礎体温はどう変化しているか。
睡眠時間は足りているか。
食欲や胃腸の状態はどうか。
疲れが抜けない状態になっていないか。
こうした変化は、病院の検査とは違った意味で、現在の体を知るための情報になります。
妊活では「何を食べれば着床しますか?」「何をすれば内膜が厚くなりますか?」と、一つの方法を探したくなることがあります。
しかし、特定の食品や生活習慣だけで着床を左右できるわけではありません。
だからこそ、何か一つを頑張るのではなく、食事・睡眠・運動・冷え・ストレスなど、自分の生活全体を無理のない範囲で整えていくことを大切にしていただきたいと思います。
病院治療と一緒に、赤ちゃんを迎える体づくりを
体外受精や凍結胚移植を予定している方にとって、病院での治療はとても大切です。
漢方は、その代わりになるものではありません。
勉強堂薬局では、採卵や移植の予定、使用している薬、これまでの治療経過なども伺いながら、漢方をどのように取り入れていくかを一緒に考えています。
そして、子宮内膜の厚さだけではなく、
月経、基礎体温、冷え、胃腸、睡眠、疲労などを含めて、赤ちゃんを迎えるための体全体を見ていくこと。
それが、勉強堂薬局が大切にしている妊活の体づくりです。
「次の移植までに何かできることをしたい」
「移植を繰り返していて、自分の体も一度見直してみたい」
そんなときには、これまでの検査結果や基礎体温表なども一緒に振り返りながら、今の体について考えてみませんか。
執筆者
平尾 利枝
薬剤師
日本不妊カウンセリング学会 会員
勉強堂薬局で妊活・不妊相談を担当。薬剤師としての知識を生かし、病院での検査や治療状況も確認しながら、漢方の視点からお一人おひとりの体調や体質に合わせた妊活の体づくりをサポートしています。


